閨房から生まれた美しいものたち
 
鈴木千香枝コレクションより
朝鮮王朝時代の女性たちが綿々とアンバンで引き継いできた刺繍、メドゥプ、ポジャギなどを
はじめとする閨房工芸は、時代を超えてもその技と精神は受け継がれている。
十長生メンバーの閨房工芸研究家である鈴木千香枝のコレクションの一部をご紹介する。
 
 裁縫道具
       裁縫箱                糸入れ               裁縫箱       
 
閨房七友(キュバンチルウ) 규방칠우
 男女有別の朝鮮王朝時代は、住居空間も男女に別れていた。
閨房は、女性たちの生活空間であるアンバン(内房)のことで、
そこで必要とされる針・糸・物差し・指ぬき・火熨斗(ひのし)・はさみ・焼き鏝(やきごて)の七つの
裁縫道具をいい、閨中七友(キュジュンチルウ)ともいわれ、
これら七つ道具を擬人化した小説『閨中七友争論記』(朝鮮王朝時代後期、作者未詳)がある。
 
 
針山 바늘꽂이
吉祥紋様が刺繍されたもの、五方色(青・白・赤・黒・黄の5色)の絹で作ったものなどさまざまな針山がある
 
糸 巻(シルタレ)실타래
 
  コルム(指ぬき)골무
古いものは50年位前のものなどが多い。
 
   袋 物(チュモニ)
 
左からトゥルチュモニ(夾嚢)、チュモニ(角嚢)、セクトン色がデザインされたトゥルチュモニ(夾嚢)
 
  老若男女問わず愛されたチュモニ(巾着)は、
  朝鮮王朝時代に多様な展開を見せる。
  丸形はトゥルチュモニ(ヨンナン 夾嚢)
  角型はキチュモニ(角嚢)という。
  香嚢(ヒャンナン)や薬嚢(ヤンナン)のほか、
  小物入れとして、筆、眼鏡、印象、扇子、お守り、
  箸と匙などを入れて携帯する巾着として重宝された。
刺繍で吉祥紋を描き、メドゥプで飾りをつけたチュモニ   
左から香嚢、キチュモニ(耳型角嚢)、トゥルチュモニ(夾嚢)
ノ リ ゲ  노리개
女性の胸元をの飾るノリゲは、韓服の造形美を引き立てる、重要な装身具でした。
朝鮮王朝時代に女性が身に着けた衣装や装身具には、厳格な身分制が色濃く反映されていました。
ノリゲは、ティドン(留め金)、宝石などの飾り、メドゥプ(飾り結び)、房で構成されています。
 メドゥプと刺繍で作られたノリゲ
   
         ノリゲ                    ノリゲ                   ノリゲ
 
 
    ノリゲ       香ノリゲ     ノリゲ        香ノリゲ
写真右の香ノリゲは、19世紀に宮中の尚宮(高位女官)が身に着けた翡翠香ノリゲを復元したもの。
写真の水色の部分が、本来は円筒形の練り香にカワセミの羽を張り付け、簾のように下げている。
  
 
パヌルノリゲ 바늘노리개
 
扇錘(男性用の扇にさげる飾り)부채와 무채장식
     プチェ(摺扇)に着ける飾りの扇錘(ソンチュ)は、男性の風流の象徴とされ、素材や装飾、房の種類に趣向を凝らしました。
扇は、男性にとって需要な身の回りの品でしたが、とりわけプチェ(摺扇)は、科挙試験に合格した者のみに携帯が許され、両班(貴族階級)でも科挙に豪快していないもの、陰官(家柄から特別に任用された功臣)、身分の高い官僚である堂上官以下の武官などは使用が認められていませんでした。
扇錘には、棗や玉などに彫りを施し、メドゥプで結んだものが主流でした。 
  刺繍いろいろ
 
ポジャギ(褓子器:包むもの)
 刺繍が施された繍褓(スポ)
 
布を縫い合わせたチョガッポ (ポジャギの一種)
 
夏用のチョガッポ
大小さまざまなものを包んだり、仕切り用の布ととして使われた
 
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